自己破産で財産がゼロになるは誤解です
「自己破産をしたら、家も貯金も何もかも失って、明日からの生活さえままならなくなるのでは…」
借金の悩みで苦しんでいる方の多くが、このような大きな不安を抱えていらっしゃいます。テレビドラマなどの影響で、「自己破産=全財産没収」という厳しいイメージが先行しているのかもしれません。
しかし、それは大きな誤解です。自己破産は、支払不能となった方の債務と財産を法律に基づいて整理し、生活再建を図るための手続きです。
だからこそ、法律は破産後の生活に必要な一定の財産を手元に残すことを認めています。これを「自由財産」と呼びます。明日からの生活費、当面の住まい、仕事に必要な道具など、あなたが再出発するために不可欠なものは、きちんと守られる仕組みになっているのです。
私たち再生の歩み法律事務所は、その名の通り、ご相談者様が再び力強く人生の歩みを進められるよう、全力でサポートすることを使命としています。まずは「財産がゼロになるわけではない」ということを知っていただき、少しでも不安を軽減する参考になれば幸いです。
このテーマの全体像については、自己破産で手放す財産・残せる財産の全体像で体系的に解説しています。
知っておきたい「自由財産」3つの基本ルール
では、具体的にどのような財産が「自由財産」として手元に残せるのでしょうか。このルールは、大きく分けて3つのカテゴリーで定められています。この全体像を先に掴んでおくと、個別の財産の扱いがとても理解しやすくなりますよ。

この3つのルールは、自己破産後の生活に必要な財産を確保するための仕組みとして機能します。それぞれの内容を、もう少し詳しく見ていきましょう。
①法律で当然に残せる財産(本来的自由財産)
まず基本となるのが、法律によって当然に手元に残すことが認められている財産です。裁判所の許可などを必要とせず、当然に自由財産となることから「本来的自由財産」と呼ばれます。これには、特に重要な2つの柱があります。
- 99万円以下の現金
あなたが「現金」として手元に持っているお金は、99万円まで無条件で残すことができます。これは、破産手続きが始まった後の当面の生活費などを想定したものです。「タンス預金」などをイメージすると分かりやすいかもしれません。 - 差押禁止財産
生活に欠かせない家財道具(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッドなど)や、仕事に不可欠な道具なども、法律で差し押さえが禁止されています。これらは金額にかかわらず、生活の基盤として守られます。
ここで非常に大切なポイントは、「99万円までOKなのは、あくまで現金(タンス預金など)であり、銀行の預貯金は扱いが異なる」という点です。この違いは後ほど詳しくご説明しますね。
②裁判所の判断で範囲を広げられる財産(自由財産の拡張)
「法律で決まった基準を少し超えてしまうけれど、これはどうしても生活に必要で…」
そんなケースも当然ありますよね。そこで設けられているのが「自由財産の拡張」という制度です。
これは、本来であれば処分対象となる財産でも、あなたの生活維持や再建のために不可欠であると裁判所が認めれば、例外的に手元に残すことを許可してくれる、というものです。画一的なルールだけでなく、個別の事情をきちんと考慮してくれる、非常に重要な仕組みといえるでしょう。
例えば、以下のようなケースで認められる可能性があります。
- 公共交通機関が乏しい地域で、通勤にどうしても車が必要な場合
- 持病があり、今解約すると新しい保険に入れない場合
- 遠方に住む家族の介護のために車を使っている場合
どのような事情があれば認められるかは、専門的な判断が必要です。ここに、私たち弁護士があなたの状況を丁寧に裁判所へ説明し、法的なルールの範囲で、残せる可能性のある財産について適切に主張・説明するお手伝いをします。
③手続き開始後に得た財産(新得財産)
自己破産の手続きには数ヶ月かかりますが、その間の生活はどうなるのか、心配になりますよね。ご安心ください。自己破産の手続きが始まった後(正確には「破産手続開始決定」後)に得た収入や財産は、すべてあなたのものです。これを「新得財産」と呼びます。
例えば、破産手続開始決定後に受け取った給料やボーナスは、処分の対象にはならず、生活費や将来のために自由に使うことができます。
自己破産で基準となるのは、あくまで「破産手続開始決定時」の財産です。この日を境に、それ以前の財産は精算の対象となり、それ以降に得た財産はあなたの新しい財産として守られる、と覚えておきましょう。開始決定後の自己破産と相続財産の扱いなども、この新得財産にあたります。
参照: 破産法 | e-Gov法令検索
【財産別】自己破産で残せる金額の目安と注意点
ここからは、皆さんが最も気になっているであろう個別の財産について、「いくらまで残せるのか」という目安と注意点を具体的に見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。なお、持ち家などの自己破産における不動産の扱いは、原則として処分対象となります。

現金:99万円まで(タンス預金など)
前述の通り、手元にある現金は99万円まで法律で守られています。これは生活再建のための資金として、非常に重要な役割を果たします。
ただし、一つだけ絶対に注意していただきたい点があります。それは、自己破産を申し立てる直前に、預金口座からお金をまとめて引き出して現金化する行為です。
「預金だと20万円までしか残せないから、今のうちに現金にして99万円の枠を使おう」と考えるお気持ちは分かります。しかし、この行為は裁判所から「財産隠し」と判断される極めて高いリスクを伴います。財産を意図的に隠したと見なされると、最悪の場合、借金の免除が認められなくなる可能性もあるのです。あくまで、生活の中で自然に手元にある現金を指す、ということを忘れないでください。
預貯金:裁判所の運用により異なるが、目安は20万円まで(全口座の合計)
銀行や信用金庫などに預けている預貯金は、現金とはルールが異なります。原則として、評価額が20万円を超える場合に処分の対象となります。
ここでの注意点は、2つです。
- 金融機関ごとではなく、全口座の合計額で判断される
例えば、A銀行に15万円、B銀行に10万円の預金がある場合、合計は25万円となります。この場合、裁判所の運用によっては、預貯金全体が処分の対象となる可能性があります。1つの口座が20万円以下でも安心はできません。 - 借入先金融機関の口座は凍結される
カードローンなどを利用している銀行の口座は、弁護士が介入通知を送った時点で凍結され、預金が借金と相殺されてしまう可能性があります。給与振込口座などに指定している場合は、事前に変更しておく必要があります。
生命保険:裁判所の運用により異なるが、解約返戻金の目安は20万円まで
生命保険や学資保険、個人年金保険など、貯蓄性のある保険も財産と見なされます。判断基準となるのは、月々の掛金ではなく、「現時点で解約した場合に払い戻されるお金(解約返戻金)」の額です。
これも預貯金と同様、複数の保険に加入している場合は、すべての解約返戻金の合計額が20万円を超えるかどうかで判断されます。20万円を超えると、原則として保険を解約し、返戻金を債権者への配当に充てることになります。
ただし、持病があって新しい保険への加入が難しい場合や、受け取る保険金がご家族の生活に不可欠な場合など、特別な事情があれば「自由財産の拡張」によって保険契約を維持できる可能性もあります。安易に自己判断で解約する前に、ぜひご相談ください。
自動車:裁判所の運用により異なるが、価値(査定額)の目安は20万円まで
お車を残せるかどうかは、ローンの有無と車の価値によって決まります。
- ローン返済中の場合
ローンが残っている場合、車の所有権はローン会社にある(所有権留保)のが一般的です。この場合、車はローン会社に引き揚げられてしまいます。 - ローンを完済している場合
ローンがない場合は、純粋に車の価値(査定額)で判断されます。この査定額が20万円以下であれば、手元に残せる可能性が高いです。初年度登録から7年以上経過したような国産大衆車の場合、価値が20万円を下回るケースも少なくありません。
通勤や家族の介護などで車が生活に不可欠な場合は、たとえ価値が20万円を超えていても、「自由財産の拡張」を申し立てることで、手元に残せる可能性があります。より具体的な手順については、自己破産で車を残せる場合の判断基準をご覧ください。
退職金:受け取る時期と金額で扱いが変わる
退職金の扱いは少し複雑ですが、ポイントを押さえれば大丈夫です。重要なのは「いつ退職金を受け取るか(または見込まれるか)」です。
- すでに退職金を受け取っている場合
すでに受け取って現金や預貯金になっている場合は、それぞれのルール(現金なら99万円、預貯金なら20万円)に従って判断されます。 - まだ在職中で、退職予定がない場合
今すぐ会社を辞めるわけではない場合、将来もらえるはずの退職金見込額の「8分の1」の金額が財産として評価されます。この8分の1の額が20万円以下であれば、処分対象にはなりません。例えば、退職金見込額が100万円なら、評価額は12.5万円となり、セーフです。 - 退職間近、またはすでに退職したがまだ受け取っていない場合
この場合は、退職金見込額の「4分の1」が財産と見なされることがあります。
多くの方は在職中に手続きをされるため、「8分の1ルール」が適用されるケースがほとんどです。退職金制度があるからといって、必ずしも財産が処分されるわけではないのです。詳しい手順については、自己破産における退職金の扱いをご覧ください。
財産を残すために絶対にしてはいけないこと
「少しでも多くの財産を残したい」と考えるのは自然なことです。しかし、その一心で取った行動が、あなたの人生の再スタートを妨げる最悪の結果を招くことがあります。
絶対に、「財産隠し」だけはしないでください。
具体的には、以下のような行為です。
- 預貯金を家族や友人の口座に移す
- 車や不動産の名義を配偶者などに変更する
- 裁判所に申告する財産リストに、意図的に記載しない財産がある

自己破産の手続きでは、裁判所から選ばれた「破産管財人」という弁護士が、あなたの財産を徹底的に調査します。破産管財人は、過去数年分の預金通帳の取引履歴を確認したり、ご家族の口座を調査する強い権限も持っています。そのため、不自然なお金の動きは、ほぼ間違いなく発覚すると考えてください。
もし財産隠しが発覚すれば、借金の返済義務がなくならない「免責不許可」となる可能性が非常に高くなります。そうなれば、財産は処分されたのに借金だけが残るという、最悪の事態に陥ります。さらに悪質なケースでは、「詐欺破産罪」という刑事罰の対象になることさえあるのです。
財産を自己破産による家族への影響のために残したいというお気持ちも、正直に弁護士にお話しください。法的なルールの中で、あなたとご家族の未来を守る最善の方法を一緒に見つけ出すのが、私たちの仕事です。
大切な財産を守り、生活を再建するために
ここまで、自己破産で残せる財産について詳しく解説してきましたが、多くのルールや注意点があり、ご自身のケースではどうなるのか、かえって混乱してしまったかもしれません。
一つだけ確かなことは、自己判断で預金を移動させたり、財産の名義を変えたりする前に、必ず専門家である弁護士に相談するということです。良かれと思ってしたことが、後で取り返しのつかない事態を招くことは、この分野では決して珍しくありません。
弁護士にご相談いただければ、あなたの財産状況や生活の事情を丁寧にお伺いした上で、
- どの財産が自由財産として残せるか
- 自由財産の拡張を申し立てることで守れる財産はないか
- 手続きの前に準備しておくべきことは何か
といった点を法的な根拠に基づいて的確にアドバイスできます。
一人で情報を集めて判断することに不安を感じる場合は、早めに専門家へ相談することも選択肢です。借金の問題は、早めに専門家へ相談することで、心穏やかな日常を取り戻す第一歩を踏み出せます。
再生の歩み法律事務所では、債務整理に関するご相談は何度でも無料で承っております。あなたの不安を少しでも軽くし、生活再建に向けた手続きを、法的な観点からサポートいたします。どうぞ、一人で抱え込まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
大手法律事務所の支店長として、500件超の借金・労働問題を解決してきた実績を持つ弁護士。相談への心理的ハードルを下げ、督促に悩む人を一人でも多く救うため、債務整理特化の『再生の歩み法律事務所』を代官山に開設。「相談料は何度でも無料」とし、個人事務所ならではの丁寧な対話で解決へ伴走します。

