連帯債務の住宅ローンでも個人再生で家を守れる可能性があります
「夫婦で連帯債務の住宅ローンを組んだけれど、カードローンや他の借金が膨らんで返済が苦しい…」「大切なマイホームだけは手放したくないけれど、連帯債務だから個人再生は無理なのでは…」
今、返済や住宅の維持について強い不安を抱えながら、この記事を読んでいる方もいるかもしれません。
ご安心ください。結論からお伝えしますと、連帯債務の住宅ローンがあっても、個人再生手続きを利用して、大切なご自宅を守りながら借金問題を解決できる可能性は十分にあります。
連帯債務という複雑な状況から、「パートナーに迷惑をかけてしまうのではないか」「もう家を手放すしかないのか」と一人で抱え込み、追い詰められてしまう方は決して少なくありません。しかし、諦めるのはまだ早いです。
この記事では、連帯債務の住宅ローンを抱える方が個人再生で家を守るための具体的な方法、知っておくべきリスクとその回避策、そして手続きを進める上での重要な注意点を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたの漠然とした不安は「具体的な知識」に変わり、次の一歩をどう踏み出せば良いのかが明確になっているはずです。個人再生の全体像については、個人再生の住宅ローン特例で体系的に解説していますので、併せてご覧ください。
まず理解するべき「連帯債務」と「個人再生」の基本
複雑に絡み合った問題を解決するためには、まず基本的な知識を整理することが大切です。ここでは、「連帯債務」とは何か、そして家を守るための鍵となる「個人再生」とはどのような手続きなのかを、基本から確認していきましょう。

連帯債務とは?ペアローン・連帯保証との違い
住宅ローンを組む際の契約形態には、似ているようで全く性質の異なるものがあります。ご自身の状況を正しく把握するために、その違いを理解しておきましょう。
| 契約形態 | 債務者の数 | それぞれの責任 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 連帯債務 | 2人(例:夫と妻) | 2人ともが100%の返済義務を負う | 主債務者と従属的な保証人という関係ではなく、2人が同等の立場で全額の責任を負います。 |
| ペアローン | 2人(それぞれが債務者) | それぞれが自分のローン契約分のみ返済義務を負う | 夫婦がそれぞれ別のローン契約を結び、お互いが相手の連帯保証人になるのが一般的です。 |
| 連帯保証 | 1人(主債務者)+連帯保証人 | 主債務者が100%、連帯保証人も100%の返済義務を負う | 主債務者が返済できなくなった場合に、連帯保証人が代わりに全額を返済する義務があります。 |
この中で特に注意が必要なのが「連帯債務」です。これは、例えば3,000万円の住宅ローンに対して、夫婦それぞれが3,000万円全額の返済義務を負うという非常に重い責任です。つまり、万が一、夫が返済できなくなった場合、妻はローンの残額すべてを一人で支払わなければなりません。この「二人ともが100%の責任を負う」という点が、個人再生を考える上で非常に重要なポイントになります。ちなみに、ペアローンで組んだ住宅ローンであっても個人再生を検討することは可能です。
個人再生とは?家を残したまま借金を大幅に減額する手続き
個人再生は、裁判所を介して行う債務整理手続きの一つです。この手続きの最大の目的は、住宅ローン以外の借金(カードローン、キャッシング、奨学金など)を大幅に圧縮し、生活を再建することにあります。
具体的には、借金の総額にもよりますが、おおむね5分の1から10分の1程度にまで減額し、その金額を原則3年(最長5年)かけて分割で返済していく計画を立てます。
そして、個人再生が持つ最大の特長が「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」です。この制度を利用することで、住宅ローンだけはこれまで通り支払いを続けることを条件に、ご自宅を手放すことなく、他の借金だけを整理することが可能になるのです。
自己破産のように全ての財産を失うわけではなく、大切なマイホームを守りながら人生を再スタートできる、非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
連帯債務者が個人再生するとパートナーにどんな影響がある?
おそらく、あなたが最も心配されているのは「自分が個人再生をしたら、パートナーにどんな影響が出てしまうのか?」という点でしょう。これは非常に重要な問題です。良い面と悪い面、両方を正確に理解しておく必要があります。安易な判断は、かえって状況を悪化させる可能性もあるため、慎重に見ていきましょう。
原則:パートナーに一括請求がいくリスクがある
まず、知っておかなければならない最も大きなリスクについてです。連帯債務者の一方が個人再生を申し立てると、住宅ローン契約の内容や滞納状況によっては、その人について「期限の利益喪失」が問題となることがあります。
「期限の利益」とは、簡単に言えば「借金を分割で返済できる権利」のことです。この権利を失うと、債権者(銀行など)は、もう一方の連帯債務者であるパートナーに対して「住宅ローンの残額を今すぐ一括で支払ってください」と請求できる権利を持ちます。
例えば、3,000万円のローンが2,000万円残っている場合、突然2,000万円の一括返済を求められる可能性があるのです。これが、連帯債務の個人再生で最も警戒すべき「一括請求」のリスクです。もちろん、実際に請求されるかどうかは金融機関の判断によりますが、そのようなリスクが存在することは必ず覚えておいてください。こうした債務整理による家族への影響は、事前にしっかり把握しておくことが重要です。
例外:住宅資金特別条項を使えば一括請求を回避できる
では、どうすればこの一括請求リスクを回避できるのでしょうか。その答えこそが、先ほどご説明した「住宅資金特別条項」です。
個人再生の手続きにおいて、この住宅資金特別条項を適用することが裁判所に認められれば、話は大きく変わります。この条項が認められると、住宅ローンについては再生計画の中で特別な弁済方法を定め、一定の条件のもとで分割払いを継続できる可能性があります。
つまり、申立人が滞りなく住宅ローンを支払い続ける限り、銀行はパートナーに対して一括請求をする理由がなくなるのです。
住宅資金特別条項は、連帯債務者が個人再生で自宅の維持を検討するうえで、重要な制度です。

【実践】連帯債務で住宅資金特別条項を利用するための条件と注意点
「生命線」である住宅資金特別条項ですが、誰でも無条件に利用できるわけではありません。法律で定められたいくつかの条件をクリアする必要があります。ここでは、その具体的な条件と、手続きを進める上で絶対に欠かせない注意点を解説します。
利用するための7つの法的要件
住宅資金特別条項を利用するためには、民事再生法に定められた以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 本人が所有する建物であること(パートナーとの共有名義でも問題ありません)
- 本人が居住している建物であること
- 建物の床面積の2分の1以上が居住用であること(店舗兼住宅などの場合)
- 住宅の購入や新築、増改築のためのローンであること
- 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと(不動産担保ローンなどがあると利用できません)
- 保証会社による代位弁済から6ヶ月以内であること(詳しくは後述します)
- 税金等の滞納による差押えがなされていないこと(滞納している税金は個人再生では減額されません)
これらの条件は一つでも欠けてしまうと、原則として住宅資金特別条項は利用できません。ご自身の状況が当てはまるか、慎重に確認する必要があります。
参照:民事再生法
【最重要】手続き前にパートナーと必ず話し合うべきこと
法的な要件を満たすことと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、パートナーとの事前の話し合いです。
連帯債務の個人再生は、パートナーの協力なくして進めることは極めて困難です。黙って手続きを進めようとすれば、後々裁判所や債権者からの連絡で事実が発覚し、信頼関係が崩壊してしまうリスクすらあります。
切り出しにくい話だとは思いますが、勇気を出して、誠実に状況を伝えることが不可欠です。話し合う際には、以下のポイントを整理しておくと良いでしょう。
- 現状の共有:住宅ローン以外の借金がいくらあり、なぜ返済が困難になっているのかを正直に話す。
- 目的の共有:「この家を守り、二人で生活を再建したい」という目的のために、個人再生という手続きを検討していることを伝える。
- 影響と協力のお願い:パートナーにどのような影響が考えられるかを説明し、手続きを進めるために協力してほしいとお願いする。
この話し合いが、再建への本当の第一歩となります。
夫婦(親子)2人同時に個人再生を申し立てるケース
状況によっては、夫婦(または親子)が2人同時に個人再生を申し立てる、という選択肢が有効な場合があります。
例えば、個人再生を申し立てる本人だけでなく、パートナー自身も他に借金を抱えていて返済に苦しんでいるケースです。この場合、それぞれが個別に手続きをするよりも、一緒に申し立てることで、家計全体を根本から見直し、再生計画を立てやすくなるメリットがあります。
ただし、当然ながら弁護士費用や裁判所への予納金なども2人分必要になるというデメリットもあります。また、申立てにあたって取引履歴の開示などが必要になるため、銀行口座が一時的に凍結される可能性も考慮しなくてはなりません。どのような場合に夫婦同時の申立てを検討すべきか、専門家とよく相談して判断することが重要です。
滞納・代位弁済・競売が始まっていても諦めないでください
「すでに住宅ローンを滞納してしまっている」「保証会社から代位弁済の通知が来た」「裁判所から競売の通知が…」
ここまで事態が進行していると、「もう手遅れだ」と絶望的な気持ちになってしまうかもしれません。しかし、まだ家を守るための道が完全に閉ざされたわけではありません。ただし、手続き上の期限が問題になるため、早急な対応が必要です。
保証会社による代位弁済後でも6ヶ月以内なら間に合います
住宅ローンを数ヶ月滞納すると、銀行の代わりに保証会社がローン残額をまとめて銀行に支払います。これを「代位弁済」と呼びます。代位弁済が行われると、今度は保証会社からあなたへローン残額の一括請求が来ることになり、事態は一気に深刻化します。
しかし、ここが重要なポイントです。代位弁済が行われた日から6ヶ月以内に個人再生を申し立て、住宅資金特別条項を適用できれば、この代位弁済を「なかったこと」にできる可能性があるのです。これを「巻き戻し」と呼びます。
巻き戻しが認められれば、一括請求の状態から、再び分割払いに戻すことができます。この6ヶ月という期限は絶対です。1日でも過ぎてしまうと、家を守ることは極めて困難になります。一刻も早い専門家への相談が必要です。
競売が始まっても「中止命令」で家を守れる可能性があります
代位弁済後も支払いができないと、保証会社は裁判所に申し立て、ご自宅を強制的に売却する「競売」の手続きを開始します。裁判所から「競売開始決定通知」が届いたら、事態は最終段階です。
しかし、この段階に至っても、最後の手段が残されています。個人再生の申立てと同時に、裁判所に対して「競売手続中止命令」を申し立てるのです。これが認められれば、進行している競売手続きをストップさせ、その間に個人再生の手続きを進めて家を守れる可能性があります。
ただし、この手続きは非常に専門的で、時間的制約も極めて厳しく、ご自身での対応はまず不可能です。競売開始決定通知が届いたら、その日のうちにでも専門家に相談するくらいの迅速な行動が求められます。自己破産を選択した場合の不動産の扱いとは異なる、個人再生における重要な対応手段と言えるでしょう。

もし何もしなければ…連帯債務者が迎える未来
「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と問題を先延ばしにしてしまうと、事態は刻一刻と悪化していきます。もし、あなたが何も行動を起こさなかった場合、どのような未来が待っているのでしょうか。その現実的な道のりを、冷静に見てみましょう。
- 督促の激化:電話や郵便による督促が頻繁になり、精神的に追い詰められていきます。
- 期限の利益喪失と一括請求:滞納が続くと期限の利益を失い、あなたとパートナーの両方に、数千万円ものローン残額の一括請求が届きます。
- 代位弁済:保証会社が銀行に一括返済し、今度は保証会社から厳しい請求が始まります。
- 競売申立て:保証会社が裁判所に競売を申し立て、ご自宅は差し押さえられます。
- 競売開始決定:裁判所から通知が届き、自宅の調査のために執行官が訪れます。物件情報はインターネットなどで公開されます。
- 強制退去:競売で家が売却されると、あなたは所有権を失い、新しい所有者から立ち退きを求められます。最終的には、強制的に家を追い出されることになります。
この間、他の借入先からも訴訟を起こされ、給与や預貯金が差し押さえられる可能性も非常に高いです。これは、決して大げさな話ではなく、問題を放置した場合に起こりうる、ごく一般的な結末なのです。
複雑な連帯債務の個人再生は、まず専門家にご相談ください
連帯債務の住宅ローンがある場合の個人再生では、専門的な知識と状況に応じた判断が必要です。
住宅資金特別条項の複雑な要件の判断、パートナーへの影響の予測、債権者との交渉、そして何より、刻一刻と迫るタイムリミットの中での迅速な裁判所手続き。これらをご自身だけで対応することは難しい場合が多いため、早めに専門家へ相談することが重要です。
私たち弁護士にご相談いただければ、まず最初に行うのは、債権者へ「受任通知」を送ることです。受任通知が債権者に届くと、貸金業者等からの直接の取立ては原則として制限され、督促による負担を軽減できる可能性があります。その上で、あなたとパートナーの状況を丁寧にお伺いし、個人再生が最善の道なのか、それとも他の方法があるのかを含め、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。
再生の歩み法律事務所は、まさにあなたのように、複雑で困難な借金問題に苦しむ方々と共に「再生の道」を歩むために設立されました。一人で悩んでいても、状況は決して好転しません。まずは、あなたの今の状況を、私たちにお聞かせください。そこから、再出発への第一歩が始まります。
なお、債務整理にかかる弁護士費用については分割払いも可能ですので、費用の心配から相談をためらっている方も、どうぞご安心ください。
大手法律事務所の支店長として、500件超の借金・労働問題を解決してきた実績を持つ弁護士。相談への心理的ハードルを下げ、督促に悩む人を一人でも多く救うため、債務整理特化の『再生の歩み法律事務所』を代官山に開設。「相談料は何度でも無料」とし、個人事務所ならではの丁寧な対話で解決へ伴走します。

