債務整理で銀行口座は凍結される?給与・生活費を守る対策

債務整理をしても、事前の対策により給与や生活費への影響を抑えられる場合があります

「債務整理を考え始めたけれど、銀行口座が凍結されて給料が引き出せなくなったら…」「日々の生活費はどうなってしまうんだろう…」
借金の返済に追われる中で、そのような不安を抱えていらっしゃる方は、決して少なくありません。インターネットで情報を探しても、断片的な情報ばかりで、かえって混乱してしまうこともあるでしょう。

でも、ご安心ください。正しい知識を持って早めに準備をすれば、債務整理による給与や生活費への影響を抑えられる可能性があります。

この記事では、債務整理による銀行口座の凍結について、多くの方が抱える不安や疑問に、専門家である弁護士が一つひとつ丁寧にお答えしていきます。なぜ口座が凍結されるのかという根本的な仕組みから、弁護士に依頼する「前」にご自身でできる具体的な対策、そして万が一の事態への対処法まで、わかりやすく解説します。

この記事では、口座凍結の仕組みと事前に検討できる対応を整理し、現在の状況に応じて確認すべき点を解説します。まずは正しい知識を身につけ、生活再建に向けた準備を進めましょう。債務整理の全体像については、債務整理の基本で体系的に解説しています。

まず理解するべき口座凍結の「仕組み」

口座凍結への対策を立てるには、まず「なぜ凍結が起こるのか」という仕組みを正しく理解することが大切です。漠然とした不安の正体を知ることで、冷静に対処できるようになります。決して難しい話ではありませんので、一緒に見ていきましょう。

凍結の目的は銀行による「相殺」

銀行が口座を凍結する一番の目的は、「相殺(そうさい)」という手続きを行うためです。「相殺」とは、簡単に言うと、銀行が持っている「あなたへの貸付金(借金)」と、あなたが持っている「銀行への預金」を、お互いに帳消しにする手続きのことです。

例えば、あなたがA銀行から100万円のカードローンを借りていて、同じA銀行の普通預金口座に20万円の残高があったとします。この場合、銀行はあなたの預金20万円を借金の返済に充てて、借金を残り80万円に減らすことができます。これが相殺です。

この相殺を確実に行うために、銀行はまずあなたの口座から預金が引き出せないように一時的に「ロック」します。これが「口座凍結」の正体なのです。つまり、口座凍結は銀行が自身の債権(貸したお金)を回収するための、正当な権利行使の一つというわけです。

債務整理における銀行口座凍結と相殺の仕組みを図解で解説。借金がある銀行の預金が返済に充てられる流れが示されている。

「受任通知」が凍結の合図になる

では、口座凍結は具体的にいつ実行されるのでしょうか。その引き金となるのが、弁護士から銀行などの債権者へ送付される「受任通知」です。

受任通知とは、「私、弁護士が〇〇様の代理人として、これから債務整理の手続きを開始します」ということを知らせる正式な書面です。銀行がこの通知を受け取った時点で、「債務者が債務整理に入る」ことを知り、相殺のために口座を凍結する、という流れになります。

ここで非常に重要なのは、凍結のタイミングは「弁護士に相談した時」や「契約した時」ではない、という点です。弁護士が準備を整え、受任通知を発送し、それが銀行に届いた後なのです。つまり、債務整理の準備を始めてから通知が発送されるまでの間には、対策を講じるための貴重な時間が残されているのです。

全ての口座が対象ではない!凍結される口座の条件

「債務整理をしたら、持っている銀行口座が全部使えなくなるのでは?」という心配をされる方が非常に多いのですが、それは誤解です。安心してください、全ての口座が凍結されるわけではありません。

凍結の対象となるのは、原則として「借金をしている銀行(またはその銀行のグループ会社が保証会社になっているローンがある銀行)の口座のみ」です。

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

  • A銀行:カードローンで100万円の借金がある
  • B銀行:給与振込口座として利用しているが、借金はない
  • C銀行:公共料金の引き落とし口座として利用しているが、借金はない

この場合、債務整理の対象にA銀行を含めると、A銀行の口座は凍結されます。しかし、借金のないB銀行やC銀行の口座は、通常、A銀行の債務整理だけを理由に凍結される可能性は高くありません。

この原則を理解することが、給与や生活費を守るための対策の第一歩となります。

【最重要】弁護士に依頼する「前」に行うべき3つの対策

ここからが、あなたの生活を守るために最も重要なセクションです。弁護士に正式に依頼し、受任通知が発送される「前」に、状況に応じて検討したい対策を3つ、優先順位の高い順にご紹介します。この記事を読んだら、すぐに行動に移せるように、具体的にお伝えしますね。

対策1:凍結対象口座の預金を全額引き出す

最も緊急性が高く、最初に行うべき対策です。借金をしている銀行の口座に預金が残っている場合、受任通知が届けばその預金は相殺によって失われてしまいます。そうなる前に、ATMや窓口で預金の全額を引き出してください。

引き出した現金は、当面の生活費として手元で安全に保管するか、後述する「借金のない安全な銀行口座」に移しておきましょう。

「これって財産隠しにならない?」と不安に思われるかもしれません。生活費を確保する目的であっても、金額や使途によっては手続上の説明が必要になる場合があるため、引き出したお金の使い道は記録しておき、弁護士に必ず共有してください。

ただし、一点だけ絶対に守ってほしい注意点があります。それは、引き出したお金を特定の貸金業者だけの返済に充ててはいけない、ということです。これは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、特に自己破産を検討している場合に、手続きが不利に進む可能性があります。引き出したお金は、あくまでご自身の生活のために使ってください。

対策2:給与や年金の振込先を安全な口座へ変更する

次に、生活の基盤である給与や公的年金などを確実に受け取るための対策です。もし、給与の振込先が凍結対象の銀行口座になっている場合は、大至急、勤務先の経理や総務担当部署に連絡し、振込先を「借金のない、安全な銀行の口座」に変更する手続きを行ってください。

もし安全な銀行口座を持っていない場合は、すぐに新しく開設しましょう。債務整理の手続き中でも、新しい預金口座を作ることは可能です。

会社に手続きを依頼する際、債務整理のことを正直に話す必要はありません。「メインバンクを変更したいので」「口座を整理していて」といった、当たり障りのない理由で十分です。ほとんどの場合、会社側も深く詮索することはありませんので、ご安心ください。給与振込先の変更手続きは、会社の締め日などの関係で反映までに時間がかかることもあるため、弁護士への相談と並行して、できるだけ早く着手することが生活への影響を抑えるために重要です。

債務整理の準備として、勤務先に給与振込口座の変更手続きを電話で行っている男性。生活を守るための重要な対策の一つ。

対策3:公共料金などの引き落とし口座を変更する

電気、ガス、水道、家賃、携帯電話料金、保険料など、毎月の生活に欠かせない支払いが滞らないようにすることも非常に重要です。

まずは、凍結対象の口座から何が引き落とされているかをリストアップしてみてください。そして、それぞれの支払いについて、以下のいずれかの方法に変更する手続きを進めましょう。

  • 借金のない、安全な銀行口座からの引き落としに変更する
  • コンビニなどで支払える請求書払いに変更する

手続きは、各サービス提供会社のウェブサイトやコールセンターから行えることがほとんどです。少し手間に感じるかもしれませんが、支払いが滞ってしまうと、債務整理の準備中に、電気・ガス・水道・通信などの支払いが滞るおそれがあります。これもまた、生活再建に向けた大切な準備の一つです。

こんな時どうする?口座凍結にまつわる困難なケースと対処法

ここまで理想的な対策の流れを説明してきましたが、中には「対策が難しい状況」に置かれている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、そうした困難なケースと、その具体的な対処法について、実務経験を踏まえて解説します。

給与振込先の変更が会社規定で難しい場合

「給与振込口座は会社指定の銀行で、変更が認められていない」というケースは、残念ながら存在します。そして、その指定銀行で借金をしてしまっている場合、非常に深刻な状況に陥ります。

しかし、諦めないでください。まず知っておいていただきたいのは、労働基準法では、賃金は労働者に直接、全額を現金で支払うことが原則と定められている点です。口座振込はあくまで例外的な措置なのです。

この法律を盾に強硬な交渉をするというよりは、まずは会社の経理や人事の担当者に、正直に事情を(可能な範囲で)説明し、特例として現金での手渡しや、本人名義の別口座への振り込みが可能かなどを相談してみましょう。真摯に相談すれば、応じてもらえるケースも少なくありません。

参照:厚生労働省|賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。

対策が間に合わず凍結口座に給与が振り込まれたら?

振込先変更の手続きが間に合わず、凍結されてしまった口座に給与が振り込まれてしまった場合でも、相殺の対象となる預金は、あくまで受任通知の届いた時点での残高です。凍結後に入金された金員は相殺はされませんのでご安心ください。

しかし、凍結された口座は通常の口座とは異なり、ATMの操作による入出金が出来ない場合がほとんどです。引き出す場合は、事前に銀行に問い合わせの上、窓口での対応が必要となります。

だからこそ、ここまでお伝えしてきた「事前の対策」が何よりも重要なのです。もし、すでにお困りの状況でしたら、一刻も早く緊急性の高い債務整理の相談窓口ご連絡ください。

給与が凍結口座に振り込まれてしまい、途方に暮れた男性が法律事務所で弁護士に相談している様子。専門家が親身に対応している。

口座凍結に関するよくあるご質問(Q&A)

最後に、口座凍結に関して多くの方が疑問に思われる点を、Q&A形式で簡潔にお答えします。

Q. 口座凍結はいつまで続きますか?解除されるのですか?

A. 口座の凍結期間は、金融機関によって異なりますが、一般的には1ヶ月から3ヶ月程度です。銀行が相殺の手続きを終え、保証会社などがあなたに代わって銀行に返済を行う「代位弁済」という手続きが完了すると、凍結は解除されます。
解除後は、再び入出金などが可能な預金口座として利用できるようになるのが通常です。ただし、その銀行やグループ会社から新しくお金を借りることはできなくなります。

Q. 任意整理なら、口座凍結を回避できますか?

A. はい、その通りです。任意整理は、自己破産や個人再生と違い、整理の対象とする債権者を自由に選ぶことができます。
したがって、給与振込口座として使っている銀行からの借金を任意整理の対象から外すことで、その口座が凍結されるのを回避することが可能です。これは任意整理の大きなメリットの一つであり、生活への影響を最小限に抑えたい場合に有効な選択肢となります。

Q. ゆうちょ銀行やネット銀行の口座も凍結されますか?

A. はい、凍結の対象になります。ゆうちょ銀行、楽天銀行やPayPay銀行といったネット銀行、信用金庫など、金融機関の種類に関わらず、その金融機関から借金があれば、口座は凍結される可能性があります。
「どの銀行か」だけでなく、「その金融機関や関連する保証会社に債務があるか」を確認することが重要です。

Q. 債務整理をしたら、新しい銀行口座は作れませんか?

A. いいえ、そんなことはありません。債務整理の手続き中であっても、その後であっても、新しく銀行の預金口座を開設できる場合があります
債務整理をすると信用情報に登録されますが、これはローンやクレジットカードの審査に影響するものであり、預金口座の開設が制限されることはありません。対策の2番目でお伝えした通り、安全な口座がない場合は、速やかに新しい口座を開設しましょう。

まとめ:一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください

今回は、債務整理に伴う銀行口座の凍結について、その仕組みと具体的な対策を詳しく解説しました。

口座が凍結されると聞くと、とても怖いことに感じるかもしれません。しかし、この記事でお伝えしたように、

  • 凍結されるのは「借金のある銀行の口座」だけであること
  • 弁護士に依頼する「前」に準備する時間があること
  • 預金の引き出しや振込先の変更といった事前対策で、生活は守れること

をご理解いただけたかと思います。

最も大切なのは、パニックにならず、一人で抱え込み、手遅れになってしまう前に、専門家である弁護士に相談することです。あなたのご状況を詳しくお伺いできれば、どの口座が凍結対象になるのか、いつまでに何をすべきか、そしてどの債務整理手続きが最適なのかを的確にアドバイスできます。

再生の歩み法律事務所では、借金問題に苦しむ方が、安心して新たな一歩を踏み出せるよう、親身にサポートすることをお約束します。弁護士への相談は、あなたの生活再建に向けた最も確実な一歩です。ご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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