突然の訴状…でも慌てないで。まだ借金が消える可能性はあります
ある日突然、裁判所から「訴状」や「支払督促」と書かれた物々しい封筒が届く。開いてみると、忘れていたはずの借金の請求……。多くの方が、その瞬間に頭が真っ白になり、心臓が凍りつくような思いをされることでしょう。「これからどうなってしまうんだろう」「家族に知られたらどうしよう」と、不安で夜も眠れないかもしれません。
でも、どうか一人で抱え込まないでください。そして、まだ諦めるのは早いということを知っていただきたいのです。あなたが今感じている焦りや不安は、決して特別なことではありません。そして、その手元にある書類は、絶望の通知ではなく、問題を解決するための「最後のチャンス」を知らせる合図なのかもしれないのです。
この記事では、法律の専門家である私たちが、あなたと同じように悩んでいる方々のために、以下の点について分かりやすく解説していきます。
- 訴訟を起こされていても、借金の時効を主張できるのか?
- 具体的に、今すぐ何をすれば良いのか?
- 絶対にやってはいけない、状況を悪化させる行動とは?
大丈夫です。この記事を読み終える頃には、現状を正しく理解し、次に取るべき行動が明確になっているはずです。まずは深呼吸をして、一緒に解決の道を探していきましょう。時効の援用という制度の全体像については、訴状・支払督促が届いたときの対処法で体系的に解説しています。
訴訟中に時効援用は可能?まず知るべき3つの重要ポイント
さて、ここからが本題です。読者の方が一番知りたいであろう「裁判を起こされている状況でも、時効の援用はできるの?」という疑問にお答えします。
結論から申し上げますと、「はい、可能です。ただし、いくつかの重要な条件があります」ということになります。この点を正しく理解することが、あなたの未来を大きく左右します。まずは、絶対に押さえておくべき3つの基本原則を、一つひとつ見ていきましょう。

ポイント1:時効は「援用」しなければ成立しない
多くの方が誤解されている点ですが、借金は、時効期間が経過すれば自動的に消滅するわけではありません。現行民法では、一般の債権は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」などの期間が定められており、個別の事情により起算点が問題になります。
時効によって借金をなくすためには、「時効の期間が過ぎたので、私はこの利益を受けます(=もう支払いません)」という意思表示、これを法律用語で「援用(えんよう)」と呼びますが、この手続きが不可欠です。なぜなら、中には「時効だと分かってはいるが、お世話になったからきちんと支払いたい」と考える方もいらっしゃるかもしれず、法律はそのような個人の意思を尊重しているからです。
つまり、債権者から訴訟を起こされたとしても、あなたが「時効を援用します」と主張しない限り、裁判所は時効を考慮してはくれない、ということを覚えておいてください。
参照: 民法 | e-Gov 法令検索
ポイント2:判決確定前なら「答弁書」での主張が可能
「でも、もう裁判になっちゃったし…」と不安に思う必要はありません。訴訟中でも、まだ判決が確定していなければ、時効を主張するチャンスは残されています。
そのための最初の武器となるのが、訴状と一緒に送られてきた「答弁書(とうべんしょ)」という書類です。これは、訴えられた側(被告)が、訴えた側(原告)の主張に対して、言い分を書いて裁判所に提出するためのものです。
この答弁書の提出期限内に、「消滅時効を援用します」とはっきりと記載して提出すること。これが、訴訟手続きの中で時効を成立させるための、極めて重要な第一歩となります。具体的な書き方は後ほど詳しく解説しますが、この答弁書こそが、あなたの反撃の狼煙(のろし)になるのです。
ポイント3:時効がリセット(更新)されるケースに注意
「最後の返済から5年以上経っているから大丈夫」と安心するのは、少し早いかもしれません。時効の援用がうまくいかない最大の理由が、時効期間が途中でリセットされてしまう「時効の更新(こうしん)」という制度の存在です。
特に注意すべきなのは、以下の2つのケースです。
- 過去の裁判や支払督促による更新
あなたが気づいていないだけで、実は過去に(10年以内に)同じ借金について裁判や支払督促の手続きをされ、判決などが確定している場合があります。この場合、時効期間はその確定時から10年に延長されてしまいます。引っ越しなどで裁判所の書類を受け取れなかったケースも考えられ、ご自身の記憶だけを頼りに判断するのは危険です。 - 債務の承認
時効期間の経過後であっても、債権者に対して「支払います」「少しだけ待ってください」といった発言をしたり、たとえ少額でも返済してしまったりすると、事情によっては「以後、時効を主張しない(時効の利益の放棄等)」と扱われ、時効の援用が認められなくなるおそれがあります。厳しい取り立てや督促の電話に、つい言ってしまう方が多いので注意が必要です。
これらの「時効の更新」事由があるかどうかを正確に判断するのは、ご自身だけでは非常に難しい場合があります。だからこそ、安易な自己判断は禁物なのです。
訴状が届いたら絶対にやってはいけないこと【状況悪化を招くNG行動】
裁判所からの通知にパニックになり、良かれと思って取った行動が、実は取り返しのつかない事態を招いてしまうことがあります。ここでは、時効で借金をなくせる可能性を自ら潰してしまわないために、絶対にやってはいけないNG行動を3つ、お伝えします。
1. 慌てて債権者に電話してしまう
「少し話せば分かってくれるかも」「支払いを待ってもらおう」と、訴状に書かれた連絡先に電話をしてしまうのは最も危険な行動です。電話口で返済に関する話をしてしまうと、前述した「債務の承認」とみなされ、時効の援用ができなくなる可能性が極めて高くなります。相手は交渉のプロです。うっかり言質を取られないよう、連絡は絶対に避けてください。
2. 答弁書に「分割払いを希望」と書いてしまう
答弁書には、分割払いを希望するかどうかを尋ねるチェック欄があることが多いです。しかし、ここにチェックを入れたり、「分割でなら支払えます」と書いてしまったりすることも、「債務の承認」にあたります。時効の可能性が少しでもあるなら、安易な和解案を提示してはいけません。
3. 訴状や支払督促を完全に無視する
「怖いから見なかったことにしよう…」と放置するのは最悪の選択です。答弁書を提出せずに指定された裁判期日にも出廷しないと、相手の言い分をすべて認めたことになり、「欠席判決」が出てしまいます。この判決が確定すれば、あなたの預貯金や給与などを差し押さえる「強制執行」が可能になってしまいます。無視は、時効の可能性をゼロにし、状況を決定的に悪化させる行為なのです。この点については裁判所から訴状・支払督促が届いた際の対処法の記事でも詳しく解説しています。

【実践】訴訟中の時効援用、具体的な手続きの流れ
「NG行動は分かった。では、具体的にどうすればいいの?」という声にお応えして、ここからは手続きの具体的な流れを3つのステップで解説します。一つひとつ、落ち着いて進めていきましょう。
ステップ1:訴状を冷静に読み解く【確認すべき2つの日付】
まずは、手元にある訴状を広げて、冷静に内容を確認することから始めます。難しい言葉が並んでいますが、見るべきポイントは限られています。特に重要なのは、以下の2つの日付です。
- 答弁書の提出期限:訴状に同封されている呼出状などに提出期限が記載されています(事件によっては、おおむね受領後1〜2週間程度で指定されることがあります)。この日付は絶対に守らなければなりません。まずはカレンダーに大きく丸をつけましょう。
- 時効の起算点となる日付:訴状に添付されている「計算書」や「取引履歴」といった書類に記載されている「最終取引日」や、訴状本文の「請求の原因」に書かれている「期限の利益喪失日」を探してください。この日付から現在まで5年以上が経過しているかどうかが、時効を判断する一つの目安になります。
これらの情報を正確に把握することが、時効援用の成否を分ける第一歩です。
ステップ2:「答弁書」を作成する【時効援用の記載例】
次に、時効を主張するための答弁書を作成します。複雑な法律論を書く必要は全くありません。重要なのは、「請求を認めないこと」と「時効を援用すること」を明確に記載することです。以下にシンプルな記載例を示します。
【答弁書の記載例】
第1 請求に対する答弁
1.原告の請求を棄却するとの判決を求める。
2.訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求める。
第2 請求の原因に対する認否
原告が主張する債権は、消滅時効が完成しているため、被告はこれを援用する。
基本的には、このようにシンプルに記載すれば十分です。そして、前述した通り、「分割払いを希望する」といった欄には、絶対に何も書かないようにしてください。
ステップ3:期限内に裁判所へ提出する
作成した答弁書は、必ず期限内に裁判所に提出します。提出方法は、裁判所に直接持参するか、郵送(または裁判所によってはFAXも可)で行います。
重要なのは、答弁書に記載されている「口頭弁論期日」の前、できれば指定された提出期限までに、裁判所に到着するように送ることです。もし期限を過ぎてしまうと、あなたが何も反論しなかったものとして扱われ、相手の請求どおりの判決(欠席判決)が出てしまうリスクがあります。迅速な行動が何よりも大切です。
答弁書提出後、あなたの借金はどうなる?【成功と失敗の分かれ道】
答弁書を無事に提出できたとして、その後はどうなるのでしょうか。考えられるシナリオは、大きく分けて2つあります。
シナリオ1:時効援用が成功した場合
あなたの主張が正当なものであれば、債権者(原告)は「これ以上裁判を続けても勝ち目がない」と判断し、訴訟そのものを「取り下げ」てくることがほとんどです。裁判所から「取下書」が届けば、ひとまず安心です。ただし、訴えが取り下げられただけでは、借金そのものがなくなったという公的な証明にはなりません。より万全を期すためには、後日、内容証明郵便で改めて時効援用通知書を送付しておくことが望ましいでしょう。
シナリオ2:時効援用が失敗した場合
もし、あなたの気づかないところで時効の更新事由があった場合など、時効が認められないケースでは、そのまま裁判が進行します。この場合、最終的にはあなたに支払い義務がある旨の判決が下される可能性が高くなります。しかし、そうなったとしても、まだ道が閉ざされたわけではありません。次の章で解説する「債務整理」という別の解決策を検討していくことになります。
【当事務所の実績】訴訟中の時効援用を成功させた事例
「本当に、訴訟を起こされてからでも時効はうまくいくものだろうか?」そんな不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
私たち再生の歩み法律事務所では、これまで数多くの「訴訟中の時効援用」の案件を手がけ、解決に導いてまいりました。
ご相談にいらっしゃる方の多くは、突然の訴状に動揺し、どうしていいか分からず途方に暮れています。しかし、詳しくお話を伺い、資料を精査すると、時効の条件を満たしているケースは決して少なくありません。
債権者の中には、時効期間が過ぎていることを承知の上で、「訴訟を起こせば、慌てて支払いに応じるかもしれない」と考えて、あえて訴えてくる業者も存在するのです。
このようなケースで最ももったいないのは、せっかく時効で解決できるチャンスがあるにもかかわらず、訴状を無視してしまい、相手の思うつぼにはまって判決を取られてしまうことです。判決が確定すれば、時効はそこから10年間延長されてしまいます。まさに、みすみすチャンスを逃してしまうことになるのです。
私たちは、こうした状況に置かれたご依頼者様に代わって、法的に有効な答弁書を作成・提出し、相手方と交渉することで、訴えの取り下げを実現してきました。訴訟という非日常的な事態に、ご自身だけで立ち向かうのは大変な精神的負担を伴います。私たち専門家が介入することで、そのご負担を大きく軽減できると確信しています。
もし時効援用が認められなかったら…?残された道と次の一手
万が一、時効の援用が認められなかったとしても、どうか絶望しないでください。それは、人生の終わりを意味するものではありません。法的には、借金問題を整理し、生活を再建するための別の道がきちんと用意されています。
それが「債務整理」という手続きです。
債務整理には、主に以下の3つの方法があります。
- 任意整理:裁判所を介さず、弁護士が債権者と直接交渉し、将来の利息カットや分割払いの回数について和解を目指す方法。
- 個人再生:裁判所に申し立て、借金を大幅に減額してもらい、原則3〜5年で分割返済していく方法。持ち家を残せる可能性があります。
- 自己破産:裁判所に支払い不能を認めてもらい、原則として全ての借金の支払い義務を免除してもらう方法。
時効援用という選択肢が取れなかったとしても、あなたの状況に合わせて、これらの債務整理の種類と特徴(任意整理・個人再生・自己破産)の中から最適な解決策を一緒に見つけていくことができます。大切なのは、一人で諦めてしまわないことです。
訴訟対応は専門家へ。再生の歩み法律事務所が初回無料でサポートします
ここまで、訴訟中の時効援用について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。手続きのタイミングや時効が更新されているかどうかの法的判断など、ご自身だけで完璧に対応するには、やはり難しい点が多く、大きなリスクも伴います。
たった一つの判断ミスが、本来払わなくてもよかったはずの借金を、生涯背負い続ける結果につながりかねません。
私たち再生の歩み法律事務所は、「借金問題に苦しむ方と共に再生の道を歩みたい」という強い思いで、日々ご相談をお受けしています。債務整理を弁護士に相談・依頼するメリットは、法的な手続きを任せられることだけではありません。ご依頼いただいた時点で、私たちは速やかに債権者へ「受任通知」を送付します。これにより、多くの場合はあなたへの直接の督促が止まり、まずは落ち着いた時間を取り戻しやすくなります。
裁判所から書類が届き、どうすればいいか分からず、たった一人で不安な夜を過ごしているのなら、どうかその手を伸ばしてください。ご相談は無料です。あなたのお話をじっくり伺い、最善の解決策を一緒に考えます。もう一人で悩む必要はありません。

